無様エロ習作1

 寂れたホテルの一室で、ステージ衣装に身を包んだセシルは大きく息を吸い込んだ。 「聴いてください。愛島セシルで、Destiny……」 「ああ、いいからそういうの。脱いで」  一枚一枚ね、焦らす感じで。目の前の男はそう吐き捨てた。 「は……?」  セシルは呆然としたまま目を瞬かせる。彼が聞いていた話と男の態度は明らかに異なっていたからだ。どうしてもステージの前に会いたいと言っているスポンサーがいる。そういう話ではなかったのか。 「でもアナタはワタシのファンなのでしょう? 歌が聴きたいのでは」 「駆け出しアイドルの歌なんか俺がいちいち聞く訳ねえだろうが。ディレクターの野郎本当に何も知らないガキよこしやがったな」  男は大股でセシルの元へ歩み寄り、腕を掴むとベッドに引き倒した。 「この際だからはっきり教えてやるよ。俺の言うことが聞けねえんならお前の今後の仕事は一切ない。お前だけじゃねえ、お前の事務所も、仲間も、……大事なパートナーだろうとな」 「そんなことがありえる筈が……い゛っ!」  男はセシルの意見が肯定ではないと察した時点で腕を振り下ろした。セシルは殴られた箇所を押さえたが、男は事も無げにその腕を掴み上げると、顔を執拗に殴りつけた。 「ぶっ……!? い゛あ゛っ……やぁ゛っ! ……う゛ああぁあ! やめでっ!」 「ほら、大事な商売道具に傷が付くだろうが。次余計なこと言ったら鼻の骨折るからな」 「う゛げぇっ!」 「ほら返事」 「…………はい」  セシルが目を伏せて返事をすると、漸く男は手を離した。強く捕まれた手首は腫れ始めている。男はそれを気にすることなくティッシュを投げ渡し、鼻血を拭けと命じた。 「じゃあ話を戻すぞ。服脱げ」 「………………はい」 「おっ、えらいな。あと一秒遅かったらもう一回ぶん殴ってたぞお前」  セシルは震えそうになる手を必死に動かし、リボンタイを外した。ジャケットのボタンを外して、脇に置いた。 「しかし褐色膚に白いシャツだと透けるなぁ。下手に脱ぐよりいいじゃねぇか」 「ひいっ……!?」 「おいおいちょっと触っただけだろ? 女と違って減るものでもないんだから大人しくしてろ」  反抗しようという考えが浮かぶと同時に、容赦なく振り下ろされた拳が蘇り動けなくなる。男はセシルを正面から抱き締めた。引き締まった躰が分厚い脂肪に埋まっていく。男は目の前のしなやかな項に顔を埋めながら、肩から下へ手を滑らせた。男の体温が伝わるにつれて、セシルの躰が恐怖と不快で固く萎縮していく。男がわざと耳元に吸い付くと、嫌だと小さな悲鳴が響いた。だがそんな頑なな態度は男を煽ることにしかならない。此方への不快を隠さない存在を貶め、恐怖と力で制圧する優越感を男は悠々と味わっていた。  厚い胸元に手を這わせると、小生意気な弾力が男の指を押し返す。触れている膚が粟立っているのを感じるだけで男は低い声で笑った。確かにセシルは不快を感じているのは間違いない。だがそれと同時に少なからず快感も得ているはずだ。薄い布越しに探り当てた乳首をカリカリと指で弾くと、セシルは眉間に皺を寄せた。 「我慢するなよ。歌声なんかよりそういう声を俺は聴きに来てんだからよ」  恋人にするように丁寧に愛撫してやっているのだから当然のことだと男は特に驚きもしなかったが、セシルにとって強制的に押しつけられる快感はただ苦しみでしかない。 「壁に手つけてろ。余計な真似したら分かってんな」  男はセシルが躰を震わせながら命令に従ったのを確認すると、セシルのベルトを掴んで一気に引き抜いた。 「それは……っい!」 「今注意したばかりだろうが阿呆」  男が半ば抓るように乳首を摘まむと、セシルは瞼を強く閉ざして動きを止めた。もう何も意識すまいという健気な防衛反応だったが、それもまた男を悦ばせた。目を閉ざしているからこそ脚を伝って下着が降ろされている感覚が明確に伝わり、セシルが抱く惨めさに拍車を掛けた。 「へぇ~なかなかご立派様じゃねえか。使い道もねえくせによ」  男はゲラゲラと下品な笑い声を垂れ流しながら、露わになった陰茎を指で突いて揺らした。平均より随分と大きい其れは突かれる度に無様に揺れる。 「大体なんだお前。肉便器の分際でそんなキメキメのステージ衣装で来る奴がいるかよ。身の程を教えてやろうな。名前はなんだっけ?」 「愛島セシルと最初に名乗りました」 「まだ身の程が分かってないらしいな」 「いだっ、痛いっ! やめて!」  セシルの悲鳴を無視して、彼の短い髪を男は強引に掴むと床に座らせた。 「さっきからなんだその偉そうな態度は? 俺と違ってお前は何の力も取り柄もないから媚び売って暮らす仕事しか選べなかったんだろうがッ! 何だその目は? まあいい、俺は優しいからな。お前に似合いの服をやるよ」  男はそう吐き捨てると戸棚から備え付けのコスプレ衣装を取り出した。生地の薄い、明らかな安物のドレスを暴れるセシルに強引に着せていく。 「離してっ、離せ……っ! 嫌だっ! う゛う……ゲエッ!」  男が襟元を強く掴むと、首が絞まりセシルは声が出せなくなる。眼前数センチまで顔を近づけると男は謝罪を要求して叫んだ。  そのまま壁に押しつけられ、何度も蹴られる。その度に無理に肉体を収めている布地が悲鳴を上げ、セシルは痛苦の呻きを漏らした。 「聞こえなかったのかコラ。俺は謝れっつってんだよ。精々っ、男娼止まりのっ、愚図がっ、逆らうっ、なっ!」 「うげぇっ!」  男の足が腕の隙間をすり抜け、鳩尾へとめり込む。咄嗟にセシルは背を丸めて床に伏した。男はすかさずセシルの頭を強く踏みつけた。柔らかな髪が皮膚と足の間で乱れる。 「まだやられたいのか、おい? 俺、物分かりの悪い馬鹿が一番嫌いなんだよ。分かってくれよ」 「……せ……でし……」 「あ!? 腹から声出せよ。ご自慢の歌声はそんな大きさじゃねえだろうが、手ェ抜いてんじゃねえ」 「すみませんでした……! もう……やめて…………」  男の足の下で、セシルは長い手足を縮めて土下座をしていた。反射的に叫んで掠れた声が弱々しく響く。衣装は所々破れて褐色の膚を晒し、異様に短いスカートは捲れて固い臀部が露出していた。  あまりにも無様で哀れな姿に、男の溜飲は多少下がった。男は喉を鳴らすように笑うと、セシルの腕を掴み、ベッドに押し倒した。 「ちょっとは学習してきたじゃねえか。可愛がってやるよ、セシルちゃん」 「…………っ!」  伸ばされた手がどのような意味を持つのか分からないほどセシルは子供ではなかった。あまりの恐怖に声も出せない。これ以上抵抗すればもっと酷い暴力を振るわれるかもしれない。酷いことをされない為に、眼前の恐怖を受け入れる。その矛盾にセシルの心は引き裂かれつつあった。  数時間後、ホテルの一室は異様な熱気と荒い吐息だけが満ちていた。男は汗塗れの躰を起こすと煙草に火を付ける。その隣では最早何の反応も示さなくなった肉人形が放置されていた。膚には幾重にも青痣が浮かび、縛られた痕も強く残っている。下腹部に抱えた重い熱が全身を炙っているようだった。虚ろに開かれた瞳は硝子玉のように動かない。  男がその様を鼻で笑った瞬間、彼の電話が鳴った。男は事も無げに通話ボタンを押す。 「おう、俺だけど。は、俺の部屋? ××号室だろうが。おい、それより今回の奴はなかなか良かったぞ。反応が良くて……えっ、連絡の行き違い? 今日のステージに出る筈だった? ええ……どうすんだよこいつ……」

旅行先のホテルでモブセシで無様エロをテーマにワンドロしようと友達と書いたもの。

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