カーテンコール・スクラップ

とある録音(ラベルにはステージ裏とのみ記載有)

「道空けて! 誰もこっち入れないで!」  遠くには微かな客の声、機材周辺では男の怒鳴り声が響いている。その後七秒程多量の足音、怒号が続く。  以下一部字起し。 「大丈夫ですか、愛島さん」 「しかしとんでもないことになったな」 「どういうことだよ、映像機材の乗っ取りなんて」 「そもそもあのデータは何なんだよ。あんな……酷い内容……」 「知らないよ! どの道もうお終いだ……」 「あれが愛島さんって嘘ですよね? いつもみたいに社長が何とかしてくれるんですよね?」 「愛島さん黙ってないでなんか言ってくださいよぉ……ねぇ………」  新たな軽い足音。布が擦れる音、掴むような音が挟まる。 「セシルさん!」 「ハルカ……ワタシ………! どうして……分からない…………ごめんな、さ」  再び多重の足音、五秒程のノイズ有。 「七海さん今はちょっと!」 「チェッ、今更作曲家が何の用だよ」 「おい、もう入り口使えない。これ以上記者が集まったら動けなくなるぞ」 「とにかく社長に連絡を。早く! 愛島さんも急いで!」 「いや、待って、待ってください! 私も一緒に行きます!」  幾人もの人間の足音を最後に遠ざかる音声。残された客の悲嘆な声を微かに十数秒流した後、テープは途切れている。
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