My Little Twinkle

 希代の天才であるシャイニング早乙女が作り上げた芸能学校、音楽の楽園、ダイヤモンドの原石が集い、憧れへの登竜門。早乙女学園を賞する代名詞はどれを取っても煌びやかで、眩くて、今のわたしとはかけ離れていた。 「では次は……貴女ね」 「は、はい!」  勢いよく立ち上がったわたしに、周囲から向けられる視線は少し冷たい。それを振り切るようにして必死に紡いだリズムは、次第に手本から逸脱する。皆自分のことで必死だから中学校のような構われ方はされないけど、その分わたしのような落ちこぼれに向けられる密やかな笑い声を聞くだけで胸が痛かった。  何かの間違いだったのかもしれないという思いが浮かぶのは、これで何度目なんだろう。  自分をどうしても変えたくて、わたしは学園への切符を手に入れた。でも現実は甘くなくて、わたしと周囲との差は広がっていくばかりだった。どんなに頑張っても授業に付いていくのに精一杯で、情けなさと悔しさだけが何度も広がっていく。一日の授業が終わって、わたしは周囲の人と出来る限り目を合わせないようにして寮まで戻った。 「にゃーお!」 「クップル……来てたんだ!」  わたしの足下に柔らかな毛が擦り付けられる。周りには誰もいないけど、一応きちんとドアを閉めてからわたしはクップルに抱きついた。  クップルはわたしの唯一のお友達だった。入学式でこの子猫を助けてから、どこから入ってくるのか分からないけど、いつも部屋に遊びに来てくれる。胸に触れている体温を感じるだけで救われるような気持ちでいた。この子もそんなわたしの気持ちを理解しているのか、顔をペロペロと舐めてくれた。 「くすぐったい」  そう声に出した時、わたしは今日初めて笑ったことに気づいた。呆然としているわたしを見てクップルは小さく鳴いた。 「ごめんね、暗い顔してちゃダメだよね。アイドルの曲を書かなきゃいけないのに……」  言いながら自分の声が小さくなっていく。曲を作ってHAYATO様に歌ってもらって、みんなを笑顔にする。それがわたしの夢だったのに、最近のわたしはずっと暗い顔をして過ごしていた。こんな所からも才能が無いのかな、なんて思えてくる。でもそんな風にめそめそしててもわたしの実力は変わらない。  置いていた鞄から課題を取り出すと、わたしはせっせとペンを動かし始めた。そんな時クップルは邪魔にならないようにいつも机の隅で大人しく丸くなっていた。こんなわたしを見守ってくれているみたいで、視界の隅の黒い毛並みに勝手に安心感を抱いて。  笑顔を取り戻してくれるこの子は、わたしだけの小さなスターだった。

リピラブ愛島君ルートの春歌ちゃん、冒頭一人ぼっちで可哀想ですよね。

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